関学グローバル・カフェ2019.7.13 レジュメ

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「冷戦後」の終わりを考える

GPRC代表・関西学院大学フェロー

                             小池洋次

米ソ両国指導者による冷戦終結宣言から今年で30年。米主導の「新世界秩序」や「民主主義の勝利」といったユーフォリア(陶酔感)は消え去り、いまやリーダー不在の「Gゼロ」とも言われる時代である。米国と中国、ロシアとの「新冷戦」も現実味を帯びてきた。国際情勢の変化とその意味を中長期の視点で考えてみたい。

  • 冷戦終結30年
  • 画期をなした1989年

・主な出来事 1.7 昭和天皇崩御、6.4 天安門事件、11.10 ベルリンの壁崩壊、

12.3 冷戦終結宣言、12.22 ルーマニアのチャウシェスク政権崩壊

・構造が崩れ始めた 1990年 10.3 ドイツ統一

1991年 8.24 ソ連共産党解体、12.25 ソ連崩壊

   ・グローバリゼーションや地域統合の進展とそれへの懐疑

   ・冷戦構造残る朝鮮半島

  • 米国を中心とする「新世界秩序」の夢

・イラクのクウェート侵攻(1990年)を受けた湾岸戦争での勝利(1991年)

・楽観論「リベラルな民主主義が人類の到達点」(フランシス・フクヤマ『歴史の終わり』1992年)

・米国のおごり、北大西洋条約機構(NATO)の拡大とロシアの反発、同時多発テロからイラク戦争、そして「癒し役」のオバマの登場

  • 「新興国」の台頭

・2000年代初頭BRICs(Brazil, Russia, India, China)」浮上、そしてBRCS(+South Africa)

・第3次パワーシフト=現在のパワーシフトは、15世紀の欧州における近代社会の誕生と、19世紀末の米国の台頭に続く「第3次」=「他の国々の台頭(Rise of the Others)」(ファリード・ザカリア・米誌ニューズウィークの国際版編集長「アメリカ後の世界」ニューズウィーク2008年5月12日号、日本版は同年6月11日号) 

・G7からG20へ、2008年初のG20サミット

・中国は「新興国の台頭」か「超大国の復活」か(P6 参考2の表を参照)

  • 30年間の教訓
  • 情報通信革命のインパクト

・変化の加速化、質的な変化

・基本にある産業のコメ=半導体の機能向上と価格低下

  • 1989年の変動をなぜ読めなかったのか

・「単線的な予測は当たらない」(ブレジンスキー元米大統領補佐官)

・人々の認識は大きく揺れる。日本についても中国についても

・従来の分析が通じない時代?

  • アメリカの世紀の終わり
  • ハンチントンの警告

・世界構造論

  • 単極(unipolar)構造=ローマ帝国や中華帝国
  • 多極(multipolar)構造=近世欧州
  • 2極(bipolar)構造=冷戦期
  • 単極・多極(uni/multipolar)のハイブリッド構造=現在
  • 真の多極化構造へ=21世紀(ハンチントン(1999)「孤独な超大国」(The lonely Superpower)Foreign Affairs)

・米国は”Rogue Superpower”(ならずもの超大国)

  • 大国の攻防と興亡

・アメリカ衰退論:典型はP.ケネディの『大国の興亡』(1988)

・反論も:代表的なJ.ナイの『不滅の大国アメリカ』(1990)、ソフトパワー論

・トランプの叫びはアメリカの悲鳴?

・国際問題関与の縮小、同盟の負担増はトランプ以前から

(3)多極の時代

・米国も「一つの地域大国」に

・それまではG2(米中)、G3(米中ロ)、G4(米中ロ印)

  • グローバル・ガバナンス
  • 地域ごとに「警察官」(ハンチントンの考え)

・東アジアは中国、中南米はブラジル…

・地域のナンバーワンとナンバーツーとの確執

  • 将来構想

・民主主義国間の同盟強化を

・G20の活用

  • 2020年大統領選挙
  • 予測の難しさ

・投票日まで1年以上あり、それまで何が起きているか分からない

・歴史的にみて重要なのは選挙の年の経済状況

・反エスタブリッシュメント・反ワシントンの風がどの程吹くか

・米国のバランス感覚:トランプ的でないものへの力も

・30年周期説:政治学者シュレジンガーによる

  • 候補者の主張を考える

   ・民主党の20人以上の候補から

  • 今後の展開

   ・2020年の投票日まで:選挙優先で政策後回しと外交での〝冒険〟の可能性

  • 米中の覇権争い
  • 覇権国と挑戦国の確執の歴史

<ツキディデスの罠> 

・ペロポネソス戦争についてアテネの台頭とスパルタの不安が戦争を不可避にしたと言われる。アリソンは過去500年の歴史を調べ、新興国が覇権国を脅かしたケースは16件で、そのうち戦争に至ったのは12件で、戦争を回避できたのは4件と結論付けた。(グレアム・アリソン(2017)『米中戦争前夜』ダイヤモンド社。原題はDestined for War)

  • 強硬策を鮮明にしたトランプ政権

<ペンス米副大統領演説(2018年11月2日、ハドソン研究所)>

・「中国共産党は関税や為替操作、技術の強制移転、知的財産の盗用、あめ玉のように配る産業補助金など、自由で公正な貿易に反する政策を多用してきた」

・「中国はほかの全アジア諸国を合わせたのと同じくらいの軍事費を投じ、陸・海・空で米国の優位を侵食しようとしている」

・「中国は他に類を見ない監視国家を築いた。米国の技術の助けを借りて拡大し、侵略的になっている」(日本経済新聞朝刊2018年11月2日付け)

  • 米国での対中強硬論の台頭とその唱道者たち

<各界による新委員会の設立(2019年春)>

・Committee on the Present Danger: China(CPDC,現在の危険、中国に関する委員会)

・CPDはもともと国内共産主義やソ連の脅威に対応。いまは中国に焦点。

<スティーブ・バノン元首席戦略官>

・「台頭する中国に技術移転を強いられた結果、アメリカの経済力は今後十年のうちに絞り取られ、見る影をなくしていくはずだとバノンは信じて疑わない。そんなことになれば時を置かず中国が世界を牛耳る。この恐怖のシナリオはすでにある段階に達したと考えている」

・「『中国の外交の歴史は四千年、ここ百五十年を除けばすべては〝蛮族の管理〟に中心が置かれてきた』とバノンは言う。『蛮族を従属国としてどう従わせるかが一貫して考えられてきたのだ。中国に対するアメリカの貢物はテクノロジーだ…』」(グリーン,ジョシュア著、秋山勝訳(2018)『バノン 悪魔の取引』

<ピーター・ナヴァロ国家通商会議議長>

・中国の世界認識のベースにある「屈辱の100年間」。「中国は軍事支配、海上封鎖、領土の割譲、多額の戦勝賠償金、主権の侵害、大量虐殺など、現在の中国が恐れているものすべてを経験した」

・中国の軍備がコスト面で有利な理由。米国にとって「不愉快な事情」=「軍事研究や新兵器開発にほとんど費用をかける必要がない」。設計を盗み出す中国人ハッカーのスキルの高さと不法な「リバースエンジニアリング(製品を分解したり動作を観察したりすることによって、技術を模倣すること)」

・中国の「空母キラー」=対艦弾道ミサイルは非対称兵器の一つ。「アジアにおける力の均衡全体をひっくり返しかねない衝撃的な出来事」。中国は米国の空母戦闘群の無力化を狙う。米国の艦船のアジアにおけるコストとリスクの負担感を上げようとしている。

・機雷による海上封鎖。その威力は心理的インパクトと敵を恐怖で麻痺させるところにある。広大な牧場に1個地雷が埋められているのに似る。「機雷はまさに、『貧者の海軍』の第一選択兵器であり、非対称戦争の典型」

・中国の3本柱戦略①米国の空母戦闘群と基地を破壊・無力化できる安価な非対称兵器の大増産②空母戦闘群の大量生産③米国の人工衛星システムの破壊と中国自身の人工衛星ネットワークの構築・制宙権掌握

・米国の戦略思想の転換を提示。空母主体の現在の米海軍の態勢を改め、潜水艦を主体にし、第一列島線の海峡(チュークポイント)で中国を封鎖するという『オフショア・コントロール』の考え。

(ピーター・ナヴァロ著、赤根洋子(2016)『米中もし戦わば 戦争の地政学』文藝春秋,原題Peter Navarro(2015)Crouching Tiger: What China’s Militarism Means for the World(crouch 【au】しゃがむ。Crouching start=しゃがんでのスタート)

(4)中国の長期戦略

<世界覇権100年戦略>

・「共産党革命100周年にあたる2049年までに世界の経済・軍事・政治のリーダーの地位を米国から奪取する」

・「貿易と成長に関して言えば、アメリカは中国に負けている。その理由は簡単だ。中国が不正を働いているからだ」

(マイケル・ピルズベリー著、野中香方子訳(2015)『China 2049』日経BP)(注)ピルズベリーは米国の中国専門家。

  • 中国の行方

・一党独裁体制と国家資本主義はいつまで続くのか

・13億の民を安定的に統治する方法とは

  • 日本の進路
  • 基本認識

・米国の国際関与縮小、同盟国の負担増は大きな流れ

  • いま考えるべきこと

・ハード、ソフト両方のパワーの総点検と再強化

・自らの立ち位置を最大限に活用

・「グローバル感度」を~シンガポールに学ぶ

(参考1)国力概念と環境の変化

・大国の概念 核戦争が勃発しても簡単に屈服しない能力がカギ。核攻撃を受けても何とか生きながらえるに必要な領土(戦略的縦深性)と低い人口集中度ないし多くの人口。→英仏日独は大国ではありえず、米国以外は中印ロが大国。

・総合国力=ハードパワー+ソフトパワー+構造力(制度が力の源泉)+サイバーパワー

・「サイバー空間とサイバーパワーの出現がもたらしている安全保障上のインパクトははかりしれないものがある。ハードパワーの文脈に限っていえば、インターネットの発達が持つ意味合いを少なくとも三つ指摘することができよう」①核兵器が相対化される可能性…相手国の壊滅的被害は核保有国にしかできなかったが、今後はサイバー空間を通じて可能に。サイバーパワーを取り入れた「新たな防衛パラダイム」が必要②生産を含む経済活動にインターネットは革命的意義③国家に新たな脆弱性をもたらす

(川﨑剛(2019)『大戦略論』勁草書房)

(参考2)A.マディソン(2000)『世界経済の成長史』東洋経済新報社

小池洋次(こいけ・ひろつぐ)1974年、横浜国立大経済卒、日経新聞社に入り、シンガポール支局長、ワシントン支局長、国際部長、日経ヨーロッパ社長、論説副委員長などを経て、2009-19年関西学院大学教授。2019年からグローバル・ポリシー研究センター代表、関西学院大学フェロー。ケンブリッジ大クレアホール終身会員、日経新聞社社友。新宮市生まれ、68歳。著書は『ソーシャル・イノベーション』『グローバル 知の仕掛け人』(以上、関学出版会)『政策形成の日米比較』(中公新書)、『アジア太平洋新論』(日経)。『政策形成』(編著、ミネルヴァ書房)『リー・クアンユー 未来への提言』(監訳、日経)など。hrkoike1022@yahoo.co.jp

グローバル・ポリシー研究センター(GPRC) 関西学院大学の組織として運営し2019年4月独立。グローバルな問題について研究し、教育する。研究の柱は①国際関係(アメリカを中心に)②メディアの将来③ソーシャル・イノベーションの3つ。日本経済新聞社、日本経済研究センター、関西学院大学等、各種メディア、大学のネットワークも活用する予定。中学から大学まで講師を派遣、進路、就活相談にも応じる。

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